From:萩原敬大(はぎわらたかひろ)
前回の記事では、あなたのビジネスを、見込み客にとってより”優れたシステム”にすることで、今よりもっと簡単に売る方法を紹介しました。今日の記事では、その続きとして、見込み客にとって優れたシステムを作り上げ、急成長を遂げているアメリカ・日本のベンチャー企業の事例をいくつか紹介したいと思います。ぜひ、参考にしてみてください。
マーケティングのハードルを低くする
まず、その前に、軽く前回話したトピックについておさらいすると…リッチは、
「あなたのビジネスはシステムである。そして、すべてのシステムには目的があり、あなたは2つの観点から自分のビジネスを見ることができる。」と言っていました。その2つというのが、、
「あなたのビジネスは、あなたの収入や財産を最大化するために設計されたシステムである」という観点。
「あなたのビジネスは、製品やサービスを使って、あなたの顧客・見込み客が望む結果を最善の形で提供するために設計されたシステムである」という観点。
この2つでしたね。加えてリッチは、あなたにお金を払ってくれるのは結局のところ見込み客・顧客であり、あなたが?を手にしたいなら、?の見込み客にとってのシステムがベストなものになっているかを常に問いかけ、改善していかなければならない。と、言っていました。
そして、この?のシステムについて、AとBというコンセプトがあり、
(A=見込み客が手に入れたい「最終結果」、B=見込み客の「優先事項」)いかに見込み客のB=優先事項(スピードの速さや便利さ、価格の安さ、確実さ、品揃え…など)を知り、その優先事項をより多く、より満足度の高い形で満たしてあげられる”優れたシステム”を作り上げた会社は、マーケティングのハードルをどんどん低くして、競合よりもはるかにラクに商品を売り、優位なポジションを築くことができる。ということでした。
優れたシステムを作った企業”6選”
それについて、前回はリッチが借り入れした銀行の住宅ローンの話、ネットフリックスとブロックバスターの事例を出しましたが、他にもおもしろい事例がたくさんあるので、ご紹介していきます。
事例①
A (最終結果)=家で料理を食べたい
B (優先事項)=できるだけ楽に、美味しいものを、なるべく安く、楽しく…など
・Blue Apron(ブルーエプロン)
ブルーエプロンは、夕食の食材宅配を専門とするアメリカの会社です。食材の宅配というと、割と似たようなサービスは以前からありましたが、それらのサービスでは満たせなかったB=お客さんの優先事項をブルーエプロンは満たしています。例えば、、
2人?4人といった少人数の分量を選ぶことができ、届くキットには人数分に計量された食材だけでなく、
必要な調味料、動画で詳細な手順をガイドしたレシピまで全て揃った状態で届きます。
どの料理も素材の下準備が済んでいるので、調理時間は35分以内と手軽。初心者でも失敗がないように配慮されていて、きちんとしたお皿に盛りつければ、レストランさながらの見た目に仕上がります。タイ料理や、トルティーヤ、インドカレーに煮物など、普通のスーパーではなかなか手に入らない食材・調味料が含まれているのに、値段は一食あたり1000円程度と、なかなかお手頃です。
などなど、、このようにお客さんの優先事項を高いレベルで満たし続けるブルーエプロンは、ほんの3年ほどで70億円もの資金を調達し、全米の家庭へ毎月200万食を届けるサービスへと成長しています。
ちなみに日本でも
Tasty Tableという,ブルーエプロンに似たサービスが出てきています。これはどちらかというと、SNSのインスタグラムで見せびらかしたい、見栄えのいい料理を作りたい。という優先事項を強く満たしにいっている感じなので、日本人に合わせてカスタマイズしている感じですね。
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Door Dash
こちらのDoor Dashは、食事の宅配は宅配でも、レストランの料理をそのまま届けてくれるというサービスです。言ってしまえば”出前”なんですが、それを自分のエリアであればどのレストランでもできるようにした感じです。
お客さんが注文する都度、レストランと配達員をマッチングし、その配達員が自宅へと料理を届けてくれるんですが、、それを管理するシステムがまた凄い。デリバリースタッフの数や時刻、予想される注文数を予測するシステムを持っていて、
食事の出来上がり時間をあらかじめ予測し、料理が出来上がってからできるだけ早くお客さんの元に届けられるようにしているそうです。
このDoor Dashは、開業わずか2年で全米250都市に展開、71億円の資金調達を行なっている注目のベンチャーです。
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Instacart
Instacartは、忙しくてなかなかスーパーに行けない…という共働きの家庭のために生まれたサービスで、アプリでサクッと操作するだけで、食料品や日用品を1?2時間で自宅まで届けてくれるという”買い物代行サービス”です。
若干手数料がかかるとはいえ、いちいちスーパーに行かなくていい、レジの長い列に並ばなくていい。定期宅配サービスとは違って、欲しい時に欲しいだけ新鮮な食材を買える。そんな優先事項を満たした事で、Instacartは創業わずか3年で、時価総額20億ドル(約2200億円!)と、驚きの成長を見せています…
事例②
A (最終結果)=買い物(服)を自宅でしたい
B (優先事項)=自分にぴったりのサイズで、できるだけ安く、早く、便利に…など
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ザッポス
あの「アマゾン」に約800億円という巨額の資金で買収された事で有名になったザッポスは、靴のインターネット通販で急成長を遂げた会社です。
ザッポスは自らを、「たまたま靴を売ることになった顧客サービス企業」と称していて、顧客サービスをもっとも大切にすることで知られています。なので、コールセンターにおいて、電話の処理時間を測ることをせず、顧客との電話には何時間かけても構わない。といった異例の施策を打ち出したり、、
送料は行きも帰り(返品)も無料、365日返品OK、
自社に在庫がない場合は、他社のサイトを検索して「こっちに売ってますよー」と教えるなど、、顧客視点でのサービスをいち早く始め、”顧客が熱狂する靴店”と評判になりました。
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ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは日本のベンチャー企業「スタートトゥデイ」が運営するファッション関連のECサイトですが、ここは非常に素晴らしいサービスかつ、ビッグデータを活用したマーケティングがうまいので、、個人的に1ファンとしてフォローし続けている会社です。
何が素晴らしいかというと、実際に利用してみるとわかるのですが、、返品OKで送料無料はもちろん、中古のサイトも運営していて、新品の服だけでなく、同じ服を中古でもっと安く買ったり、以前自分が買った服を”下取り”することで、割引で新しい服を買うことができます。
欲しかった服が値下げされたらスグに通知が来るし、以前買った服のデータから、「
それに合わせるなら、このアイテムがオススメですよ。」という絶妙にパーソナライズされたメッセージが来るので、毎回ついつい買ってしまいます…
そして、最近発表された新しいサービス
”ツケ払い”は、なんと商品受け取りから2ヶ月後の後払いOKという支払いプラン。ボーナス前でも、給料日前でも買えてしまうという、顧客のニーズをバッチリ捉えたプランです。
そんなZOZOTOWNの2016年売上高は、前年比32%増の544億円と、もの凄い勢いで伸びていますね…
事例③
A (最終結果)=不要なものを売りたい
B (優先事項)=とにかく早く、楽に、できれば高い値段で…など
・
ZOZOTOWN
実はZOZOTOWNは、いらなくなった服の買取もしていて、その下取りは完全に無料。ほんのわずかな操作で自宅に袋が届き、宅配員に取りに来てもらえれば、一点一点の見積もりと、担当者の丁寧なコメントが入ったメールが届きます。
売りたければそこですぐに売れますし、
売りたくないものは返却ボタンを押せば、なんと送料無料で返してくれます。顧客としては手間なし、リスクなし…の本当に素晴らしいサービスです。
・
メルカリ
メルカリはいわゆるオークションアプリを提供する、日本のベンチャー企業です。メルカリはアメリカのイーベイを始め、ヤフオク、楽天オークションなど、、大手がひしめくオークション市場に参入し、そのサービスの素晴らしさで海外からも注目を集める企業です。
僕は高校生の頃からモバオク、ヤフオク、イーベイやバイマなど、様々なオークションサービスを活用してきたので、このメルカリの素晴らしさがよくわかるのですが、、大手のヤフオクなどと比べると、まず登録がとても簡単。フェイスブックのアカウントさえあれば開設できますし、ヤフオクだとかかる利用料金も完全に無料です。
また、出品するのも約3分ほどとスピーディですし、即決式をとっているので、売る側も買う側もわかりやすく、ギリギリで買えなかった…というようなストレスを感じることなく楽しく利用できます。(情報過多、注意散漫な現代には合ってますよね。)
また、買う側としては見ず知らずの人とやりとりをしている分、
商品が届いてから入金すればOKというシステムも安心できますね。
そんなメルカリはローンチからわずか1年半で1000万DLを達成し、日本初のユニコーン企業(未上場ながら評価額が1,000億円を超える企業)に。創業者の山田進太郎氏は、『Forbes』誌が選ぶ「日本の起業家ランキング」に3年連続で1位に選出されています。
はるかに多くの優先事項を競合よりも高いレベルで満たす
と、、紹介したい事例はまだまだ山ほどありますが、長いのでこの辺にしておきます。笑
参考にできそうな事例はありましたか?
結局のところ、顧客が求めるA(最終結果)はどちらも同じですが、B(優先事項)はたくさん存在します。Bを競合よりはるかに多く、かつ高いレベルで満たし、顧客にとっての優れたシステムを作り上げることは簡単ではありませんが、、それができれば、あなたはマーケティングのハードルを限りなく低くし、成功しやすいビジネスを作ることがより簡単になるのです。
2週にわたって書いてきましたが、、最後に、リッチが日頃から自問している、顧客にとって優れたシステムを作り上げるための質問を、いくつかご紹介して終わりにします。
優れたシステムを作るための質問
・今ある問題点は何なのか、どうしたらそれをなくせるのか?
・顧客は何に不満を感じていて、どうすれば不満の原因をなくせるのか?
・顧客がしなければならないことで、あなたが代わりにやってあげられることは何か?
・顧客は他に何をする必要があるのか?
・顧客が最終的に求める結果を得るためにしなくてはならないことを、あなたのほうで減らしてあげられる方法はないか?
・顧客が求める結果を手にするのを遅らせているものは何なのか? それについてあなたにできることは?
週に一度でいいので、これらの質問について考え、あなたの答えを書き出してください。しばらくそれを続けることで、あなたのビジネスを見込み客・顧客にとって優れたシステムにするためのアイデアが浮かび、あなたのマーケティングのハードルを低くする助けになるでしょう。
萩原敬大