トップ > ブログ >  > 顧客は奪い取れ

顧客は奪い取れ

2017.5.13 | ,
From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)
「顧客は奪い取れ」

そんな刺激的な見出しを、会社の下の階に入っている紀伊国屋書店のショーウィンドウで目にしました。

どうも最近、このようなニュースを聞くことが多くなっているように感じませんか? 主にはインターネット・テクノロジーの発展や、グローバル化で、業界だったり、国境の垣根がどんどんなくなってきたことも一因かと思いますが、、今までは全く思いもしなかった業界から競合が現れて、これまであったビジネスを隅へと追いやってしまう。あっという間に潰してしまう… そんなことが増えているように感じます。

実際、世界的なコンサルティングファーム「マッキンゼー」のトップレベルのコンサルタントが最近出した話題の本でも、「このような流れが加速することは間違いない。」というふうに書かれていました。

今日のブログでは、実際に進行するそのいくつかの兆候(事例)と、、われわれ中小企業・起業家がそのような状態をなるべく避け、売上を上げていくための対策について、僕なりの視点で分析していきたいと思います。

 

思いもよらぬところからの刺客…


 

先日、これに関連するすごくおもしろい記事を目にしました。それが、、
外食チェーンの「ちょい飲み」が好調で、居酒屋を潰しにかかっている…というものです。

もしかしたら、あなたも利用したことがあるかもしれませんが、、最近牛丼の「吉野家」とか、「すき家」なんかでは夕方以降になると、この「ちょい飲み」という旗を店の前に立てていますよね。こういった、居酒屋ではない業態の外食チェーン(牛丼屋、ラーメン屋、ファミレス)で、軽いおつまみとお酒でサクッと飲む「ちょい飲み」というサービスの需要がすごく伸びているそうです。

このサービスをいち早く導入していた「吉野家」の売上高は、前年比1.6%増の1,886億円。「ちょい飲み」が業績に貢献したとのことで、対応の店舗を全国500店以上へと拡大したそうです。どうやらスマホのアプリで「デジタルボトルキープ」というのができるらしく、、それを見せるだけで飲み物が出てくるそうです。ちょっと飲みたい時も、しっかり飲みたい時にもいける…まさにお客さんの痒いところに手が届く面白いサービスですよね。

そのほかラーメンの日高屋は売上高が前年比4.7%増の385億円(売上のうちアルコールが占める割合は15%)。ファミレスのすかいらーくは売上高が前年比1.0%増の3,545億円とそれぞれ好調。そしてなんと、、コンビニのミニストップも、その流れを受けて、ちょい飲みできる店舗を始めたそうです…

一方で、従来からある「居酒屋」市場はというと、若者のアルコール離れや、ニーズの多様化に対応できていないマイナスポイントからか、業績悪化が見られるところが多いようです。やはり人気のちょい飲みと比べてみても、お通しを頼まないといけなかったり、立地的に、どうもサクッと立ち寄るには敷居が高い。値段も1000円以内で、、というわけにはいかないですよね。

そういうわけで、牛丼屋、ラーメン屋、ファミレス、果てはコンビニまでもが「居酒屋」のお客をどんどん奪っていく…そんな現象がどんどん進んでいます…

 

「居酒屋」という間違った”定義”


 

僕が思うに、この「居酒屋」の衰退の大きな原因となっているのが、まさに先週紹介した「マーケティングマイオピア」(視野が狭くなってしまい、自分たちのビジネスの提供する領域を間違って認識してしまうこと。)という概念が、1つとしてあげられるのではないかと感じています。

お客さんのニーズではなく、視野がどんどん近視眼的になり、自分たちは単なる居酒屋、パン屋、美容院、整骨院、HP製作会社など、、「◯◯屋」という狭い範囲で固まってしまっていることが、このような悲劇を生みます。おそらく今後、技術はどんどん進歩するでしょうし、消費者のニーズも多様化しています。そうなると、、このような狭い定義しか持たない会社は、素晴らしい定義を持つ会社によって、間違いなく淘汰されてしまうでしょう。

これはリッチの言葉の引用ですが、
”「お客さんは、一生懸命稼いだお金で、単なる”モノ”を買っているのではなく、いい気分や問題に対する解決策を買っているのだ。ということを忘れないでください。」”
まさにこういうことですね…

 

狭い視野で消えた会社 / 大逆転した会社


 

Part① Netflixとブロックバスター


この2つの会社は、何度か僕のブログでさせていただいていますが、まさにこの典型的な例じゃないかと思います。

ブロックバスターといえば、日本でいう「TSUTAYA」のような、レンタルビデオの大手企業で、一時期9000店もの店舗を持っていた会社です。でも、ご存知Netflixの登場により、、破綻へと追い込まれてしまいました…

実は、意外と知られていない事実なんですが、Netflixは初め、ブロックバスターにストリーミングの事業を買い取ってくれと打診していたそうなんですが、それをブロックバスターは無視し続けたそうです。そしたらこんなことになるなんて、、なんとも皮肉な話ですよね。

ここでのポイントも、両社が自分たちのビジネスをどのように定義していたか?ということ。ブロックバスターは自分たちを、「ただのレンタルビデオ屋」と狭く定義をしていたため、なかなかそこから抜け出せませんでした。

そこに飛び込んでいち早く郵送でのレンタルを開始し、ストリーミング配信での定額見放題サービスと、どんどんサービスを進化させたNetflixの定義はといえば、、「世界の隅々まで映像を届けること。」そして、従来の狭く限られた「テレビを解放する」という、広く、夢に溢れる定義を持っていました。

なので、初めから彼らには「ビデオを借りて家で観たい人が、我々のお客だ」という狭いレベルではなく、、映画や映像を見て楽しみたい世界中の全ての人が視野に入っていたのです。

よって、Netflixは、これまでビデオを借りていたお客さんはもちろん、テレビを見て楽しんでいた人、映画館に行って映画を見ていた人、そのほか、スマホやYouTubeなどで何らかの映像を見て楽しんでいた人、、といった無数のお客を彼らから”奪う”ことができました。そしてさらに、テレビだったり、そのような楽しみがない発展途上国の人まで取り込むことができています。

その結果、今では、Netflixのサービスは世界190カ国以上、会員数は世界で”1億人”を超えたそうです…

 

Part② ウーバーとタクシー会社


 


この写真は、先日アメリカに出張した時、帰国のため空港に向かう前に、ホテルの玄関で撮った写真です。

目の前には4台のタクシーが止まっています。そして、空港に行こうと、僕と同じく待っているお客さんは4組いました。でも、、誰もタクシーには乗ろうとしません。

なぜか?

みんな「ウーバー」でタクシーを呼んでいるからです。僕も初めて使ってみましたが、アプリでワンタッチでいつでも好きな時に呼べて、5分?10分で到着する。しかも値段はタクシーの1/3。お金は登録のクレジットカードで後払い。運転手のレビューシステムがあるので、車は掃除の行き届いた綺麗な車が多いですし、サービス・愛想もめちゃくちゃいいです。ハッキリ言って、、ウーバーを使わない理由がないのです。

途中、僕がウーバーの迎えを待っている間、1人のタクシー運転手が「道空いてるから、これ乗ったらすぐ着くぞ。」と言ってきました。でも、値段を聞いたらウーバーのちょうど3倍だったので断ると、「またウーバーか。」と、半ば諦めたようにタクシーに戻って行きました…

 

「タクシー会社」と「ウーバー」の定義の違い


 

この両者についても、全く異なる定義を持っていた。ということが明暗を大きく分けています。ほとんどの「タクシー会社」は、単なる移動手段を売っています。ホテルから空港までタクシーに乗せて、いくら。というものです。でも、、調べてみると、「ウーバー」は全然違う定義を持っていました。

ウーバーの持つ定義は「スマートな車社会の実現」。そして、最先端のテクノロジーを使って、いわゆる「所有」ではなく、「共有」するシェアリングエコノミーを推進する。「より少ない車により多くの人々を乗せる」ことによって、渋滞や、排気ガス、駐車スペースの問題など、多くの都市が抱える問題を解決することを目指している。とのこと。

このような広い定義を持っているので、、
・今の世の中では、使われていない車が大量に存在し、そこに乗車しているのは一人だけ、歩いている人を乗せればいいじゃないか。

車を持っていて、仕事がない人や、空き時間に稼ぎたい人がドライバーとして登録して、その車を有効活用して仕事をする。 車を持たない人、ちょっと移動したい人が移動手段として、その車に乗せてもらう。このようなプラスの価値の循環が生まれます。

・乗客を乗せていない時は、人じゃなくてモノを運んでもいいじゃないか。

また、このような考え方もできるので、ウーバーは人の移動に固執せずに、サービスの幅をどんどん広げています。空いている車がある。そして、店には行きたくない、移動手段がなくて行けないけど、、美味しいものを食べたいという人がいる。その両者を繋げた「ウーバーイーツ」という、ドライバーが食べ物をレストランからテイクアウトして、お客さんの元へ届ける。そんなサービスもやっているんです。

結果として、既存のタクシー会社からお客を”奪っている”のはもちろんですが、、これというのは、いわば車を売っている自動車メーカーや、バス、電車、飛行機など、他の輸送手段からお客を”奪っている”と考えて間違いないですよね。

そして、基本的には車社会で、タクシーに乗るという文化のあまりないアメリカで「ウーバー」は大ヒットしました。(一説によると、タクシー業界の市場規模が6倍くらいになったとか?) ウーバーの利用者アンケートによると、”過半数がこれまでタクシーを利用したことがなかった”と、答えたというデータもあるようなので、、Netflixと同様に、どんどん新しいお客を取り込み続けています…

 

あなたの会社の定義は?


 

では、、あなたの会社の定義はどんなものでしょうか? あなたはただの”服屋”なのでしょうか? それとも”パン屋”でしょうか? HPを作るだけの人なのでしょうか? もし、自分は単に「◯◯屋」だ。という狭い定義を持っていたとしたら、、最初に出した例のように、この先、牛丼屋、ファミレス、、コンビニといった、広い定義を持つ、思いも寄らぬ競合に、お客を奪われてしまうかもしれませんね…

”「お客さんは、一生懸命稼いだお金で、単なる”モノ”を買っているのではなく、いい気分や問題に対する解決策を買っているのだ。ということを忘れないでください。」”

もちろん、何でも屋になれというわけではありませんが、、自社の強みの活きる範囲であれば、定義を広げることでもっと多くの収益を取れるチャンスは広がります。そして、おそらくあなたのお客さんもそのことを望んでいるはずでしょう。

なぜなら、もしあなたが競合よりもいい商品・いいサービスを持っているという自信があるなら、、よくわからない競合にお客を取られるより、あなたから買う方が、きっとお客さんは幸せになるはずですしね。

萩原 敬大

4:4
萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

萩原 敬大の記事一覧

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

【STRATEGIC PROFITS】の最新記事をお届けします