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「斜陽産業」で一人勝ち…”ある雑誌”の秘密

2017.5.20 | 
From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)
17年連続の売上マイナス。販売・広告ともに不振で、休刊点数が創刊点数を上回り続けている…。今や「斜陽産業」とまで呼ばれる厳しい状況に置かれた「出版業界」。



(公益社団法人 全国出版協会 HPより転載)

このグラフのうち、月刊誌(雑誌など)については、ピーク時より売上が約3,000億円も減少しているのですが、、そんな中、7年で利益を倍増。9,000人もの定期購読者を抱え、一人勝ち状態になっている「あるメンズファッション誌」を見つけました..

それが、、創刊60年を超えた老舗雑誌「MEN’S CLUB」です。今日は、この雑誌を変えるきっかけになった1人の敏腕編集長と、彼が行った施策のポイントについて分析してみたいと思います。ちなみに、雑誌と聞くと、いわゆるマスメディアっぽい印象があるので、われわれ中小企業・起業家にとっては参考にならなそうに思いますが、、そんなことは全くないので安心してください。それではいきます…

 

「伝説的な雑誌」が犯した失敗…


 

この、「MEN’S CLUB」という雑誌は、1980年代から男性誌のトップを走り続け、数々のブームを作り上げた伝説的な雑誌だったそうです。もちろん、たくさんの成功体験があったのですが、、それゆえ、いつしかその成功体験に固執するようになってしまったそうです。

その結果、雑誌不況の他社と同様に、部数、広告収入ともに右肩下がりになっている状況から抜け出せずにいました。

この時に「MEN’S CLUB」が犯してしまった失敗というのが、20代〜50代までの幅広い世代、つまり、「みんなに好かれようとした」ということだったといいます。結局のところ、雑誌というのは広告で成り立っているので、、クライアントさん(男性誌なら、アパレル関連、高級ブランド、時計、お酒メーカー、タバコなど…)が、ここに載せたら売れる。という結果を手にしないといけないわけですよね。

そんな中で、当時の「MEN’S CLUB」は読者像がぼやけていて、伝えたい相手、そしてメッセージが不明確。なので、広告を載せたところで売れない…と、どんどん広告収入が減っていく一方でした。

 

敏腕編集長が行なった”改革”


 

そこに現れたのが、7年前に入社した「戸賀 敬城さん」という1人の敏腕編集長でした。

この方は名物編集長としてかなり有名で、ブログなどもガンガン書いてメディアに露出しているのですが、、彼はこの「MEN’S CLUB」の問題を素早く見抜き、広告収入を増やすため、とてもシンプルな2つの施策をとりました。それが…

 

①パーフェクトな1人の読者像を設定し、対象を徹底的に絞り込むこと。
②その読者を囲い込むこと。


 



”「一見、マス向けに見える雑誌も基本は同じ。というか、今は雑誌も顧客ビジネスになった。」”
というようなことを戸賀さんは言っていましたが、、シンプルに、この2つだけを愚直にやり続けたそうです。

まさに、、以前紹介した米国のマーケター:マイクのメッセージの通りです。

”「マーケティングでは、大多数の人に向けた欲張りなメッセージはいらない。あなたの目の前のたった1人でいい。そのたった1人さえパーフェクトに思い描くことができればそれで十分だ。そうすれば、間違いなくミリオンダラーのお金が稼げる。」”


では、彼は具体的にどんなことをしていったのか、、少し調べたのでご紹介しますね。

 

①パーフェクトな1人の読者像を描き、
その1人に向けてメッセージを届ける


 

まず、戸賀さんがやったことは、読者のターゲットを具体的に絞り込んだこと。おそらくリサーチをしたのでしょうが、、その読者像は35~36歳で平均年収800万円台の男性。そして、ある程度の役職で、ゴルフが趣味で、車を持っていて、、と、あまり公開はされていませんが、かなり具体的な読者像があるようです。

それを決めてから、FacebookなどのSNSでお客さんと繋がり、「日本全国スナップ」など、読者像に当てはまる読者の声をどんどん吸い上げ、パーフェクトな見込み客をさらに明確にしていく。そして、彼らの求めている内容をしっかりと反映した紙面を作るということを意識していったそうです。

読んでみるとわかりますが、、この「MEN’S CLUB」と、他の雑誌との大きな違いは、35歳のサラリーマンの男性が本当に日常で使える服。そのリアリティをとことん追求しているということ。

大抵のメンズファッション誌は、カッコいい白人のモデルを使い、「こんなの誰が買うの?」という30万円のニットや、20万円のスニーカーなどをバンバン掲載しています。今年のトレンドとはいうものの、、「これコスプレ?笑」と、思わず突っ込みたくなるような、あまりにも奇抜な服が載っていたりと、、正直、あまり現実的ではなく、読者からしたら”ずれ”のあるものばかり。戸賀さんはこういうものを、徹底的に紙面から排除していったといいます。

例えば、、この前載っていたこの特集なんかはかなり秀逸です。



(「MEN’S CLUB」 2017 6月号より転載)

タイトルが、、

質問:さあ春、何着る?
セレブは白Tにデニムで、サマになるけど、オレらはどーよ?


 

この特集・タイトルは、かなり多くの人が頭の中でしている会話をそのまんま形にした。という感じです。(僕は読者像から年齢が少しずれていますが、、思いっきりこんなことを考えたことがあったので、ついページをめくりました。)

大抵の雑誌に載っているのは、180センチ以上、筋肉ムキムキで金髪の白人モデル。そりゃ、彼らが着れば白の無地のTシャツにジーンズでもいける。でも、俺らが着たら、、「それ、部屋着ですか?」って、言われんじゃね?笑  こんな感じですね。

これは間違いなく、お客さん像が明確になっていないと、実際にリサーチをしていないと、、雑誌の作り手の頭の中からは絶対に出てこない言葉のはず。その点が本当に素晴らしいです。

 

②そのパーフェクトな読者を”1人でも多く”囲い込む


 

これはまさに、、ダンケネディの言う「群れを囲うフェンスを張れ」ということでしょう。個人的には、これまでマス向けという印象が強かった、雑誌を発行する出版社がこのようなことをやっているというのは結構驚きだったんですが、、「MEN’S CLUB」はかなりしっかりとやっています。

そして、ここがまた素晴らしい目の付け所なのですが、、まず戸賀編集長がやったのは、読者と定期的な繋がりを作るという狙いから、雑誌の「定期購読」を推進したこと。いまや「MEN’S CLUB」は、部数ではメンズファッション誌の中で3位ですが、定期購読ではダントツの1位。9000人近い数の「定期購読者」を抱えています。

ちなみにこの「定期購読モデル」は、今、シリコンバレーでもスタートアップの成功確率が大幅に高くなると話題になっていて、お客さんとの継続的な繋がりが持てるだけでなく、ビジネスが安定する素晴らしい施策です。(データでは、あのAmazonの一般会員と、有料のプライム会員では、年間のLTVが2倍以上違うそうです…)

 

常連客とはあだ名で呼び合う仲…


 

また、そのほかにも「MEN’S CLUB」 では、SNSや、編集長ブログでの情報発信を通して、お客さんと直接つながったり、全国のスナップや、イベントを開いてリアルにお客さんと会う。そんなことをかなりやっているみたいです。

中でも”優良な読者さん”との繋がりは、特に強めていて、ご飯を大勢で食べにいったり、ある時は60人の読者だけを招待したゴルフ大会をハワイで行なったりと、、中にはあだ名で呼び合うほど仲のいいお客さんもいるほど。。

そんな取り組みの甲斐あって、、7年で広告収入は倍増しました。なぜならその理由はシンプルで、「MEN’S CLUB」に広告を出すと商品が売れるから。ある時、優良読者を招いて行なった某高級ブランドのイベントでは、なんと90分で1,000万円以上の商品が売れたそうです…これこそ、パーフェクトな見込み客を描くことと、囲い込むことの力ですね。

 

最初のステップは、、やはり”リサーチ”


 

もともとトップを走っていた「MEN’S CLUB」が失敗してしまった理由は・・「みんなに好かれようとした」ことでした。

これというのは、、ニュアンスは少し違えど、多くの中小企業・起業家も陥っていることではないでしょうか? (いわゆるマスメディアや大企業ではないので、”みんなに好かれたい”というより、色々な方のお話を伺っている感じでは、、お客を絞るのが怖い。絞るとお客さんを取り逃がしそうで怖い。だから広くお客さんを取りにいってしまう。ということが原因じゃないかなと思います。)

でも、実際のところ、広くお客さんを取りに行くということは逆効果で、パーフェクトなたった1人の優良なお客さんを見つけ、その人だけに絞り込んでメッセージを出した方が、今回の「MEN’S CLUB」の事例のように、、確実に良い結果が得られます。そして、その優良なお客さんを増やし、囲い込んで行くことで、あなたのビジネスは着実に安定していくでしょう。

それを実践するための最初のステップというのは、、何度も言っていますが、やはりリサーチです。すでにあなたの商品を買ってくれている優良なお客さんに話を聴くこと。これに尽きます。詳しくは以前のブログで、中谷さんがすごくわかりやすく書いてくれているので、ぜひこちらを参考にしてみてください。

リンクはこちら

萩原 敬大

PS.
リサーチのもっと詳しいやり方、質問すべき項目、さらに質問したものをどのようにHPやセールスレターに落とし込んでいけばいいかということについては、こちらの中谷さんのグループコーチングで、フォローまで含めて全てを教わることができます。もし募集が再開された際に通知が欲しい方は、こちらの優先リストにご登録ください。

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萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

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