From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)
「顧客だけでなく、商品も大切にしなさい」
これは、リッチがメンターのジェイ・エイブラハムから昔学んだ教えの中で、とてもインパクトがあったと言っていたものの1つです。
ちなみに、この当時のリッチはといえば、親族から売上1.5億、借金1.5億という大赤字の服屋を継いだばかり。数字を見るからに、かなり苦しい状況に置かれていました… そんな彼は、いくつかの大改革を行い、このジェイの言葉を実践に移したことで、その服屋を4年ほどで7億5,000万円の高収益店へと変えました。
マーケティングにおいて、最も重要なのは顧客を知り、大切にすることですが、、今日はこの教えの通り、商品も同じように大切にすることで、高い付加価値をつけることに成功したいくつかの事例をご紹介します。リッチが服屋で実践した事例も最後の方でご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
では、商品の付加価値を高める3つのポイントをご紹介していきます。3つとも抑えてもらうのがベストですが、、これまであまり意識をしていなかったなら、、1つ実践するだけでも大きな変化があるでしょう。まず1つ目は、、
です。
”「多くの人は、一度食べてみれば違いがわかる。一度使ってみれば、うちの商品の凄さは伝わるはずだ。と言うが、そもそも見た目がダメだったら、お客は食べたいとさえ思わない。だから、見た目をおろそかにしたらそのチャンスは来ない。」”
”「どんな器に盛り付けるかで、その価値は大きく変わる。たとえ最高級の素材を使っていたとしても、こだわり抜いていたとしても、、ボロいお皿に盛り付けたのでは何の意味もない。」 ”
これは、僕が以前、マス広告の業界で有名なセールスライターの方から口を酸っぱくして言われた教えの一つです。
そして、この見せ方(パッケージ)にとてもこだわっているのが、、高級レストランです。多分、食材の代金だけで言ったら、さほど高くないはずですが、ディナーなら数万円単位のお金をとるところがザラですよね。なので、その付加価値の付け方のうまさは研究に値します。
これは先日、淡路島の近くのイタリアンレストランに行った時に撮った料理の写真なのですが、、ここでは、「国生みの地」と言われる淡路島のストーリーを表現したコース料理が提供されていました。
お皿が淡路島の形をしていたり、、この写真に写っているのはサラダなんですが、有機野菜が淡路島の形に盛り付けられ、その下にはなんと”土”が敷かれています。そこで、シェフの説明が入ります…「この土は、実はこのお野菜が採れた◯◯農園の土なんです。少しでも大地のエネルギーを感じていただきたくて、下に敷いてみることにしました。」
ただの”土”であっても、このように見せ方(パッケージ)にこだわり、それをしっかりと伝えることで、相手に価値が伝わる。それによって価格を上げることができるなあ…というのを感じさせてもらい、とても勉強になりました。
ロイヤルブルーティージャパンという会社が製造している「MASA Superpremium」というお茶があります。その値段はなんと30万円! 高いものでは60万円するものもあるらしいんですが、、決して売れていないわけではなく、高級レストランやバーを主要顧客としてその地位を確立。G7の伊勢志摩サミットでは各国首脳に提供される飲料の1つとしても選ばれているそうです。
普通のペットボトルのお茶が150円くらいなので、、その差は約2000倍くらいですよね… もちろんこれが成功した理由は、表に出ていない戦略など、いろいろとあると思いますが、1つはやはりパッケージです。その価値にふさわしい見せ方にするため、高級感のある桐箱のパッケージ、ワインボトルに入れるなど、徹底的にこだわっています。
日本に1100店舗ほどあるスターバックスコーヒーの中で、53店舗だけ”スターバックスリザーブ”という特別なコーヒーを提供しているお店があります。希少な品種の豆を、特別な機械を使い、注文をもらってから1杯ずつ作るというやり方をしていますが、ものによっては普通のドリップコーヒーの3倍〜4倍するコーヒーがバカバカ売れています。
お店によって少し違いがありますが、、やはり見せ方(パッケージ)が素晴らしいです。このコーヒーは金色のトレイに乗せられ、黒の重厚感のあるマグカップ、そしてそのコーヒーの産地やストーリー、味のクセや、合う食べ物が書かれたカードが添えられています。僕はそんなにコーヒーの味はわかりませんが、「パプア・ニューギニアの山岳地帯に面した小さな畑で、このコーヒー豆は作られています・・・」なんてカードを読みながら口に運ぶと、どうも普通のものよりも美味しいような気がしてしまいますね…笑
続いてのポイントは、、
です。
これは過去にもご紹介したことがありますが、、言うまでもなく大事ですよね。「お〜いお茶」、「BOSS」、「通勤快足」、「鼻セレブ」とか、、ネーミングを変えただけで売上が何倍、何十倍にもなったという例はたくさんあります。 検索すると結構出てくるので、ここはサラッといきますね。
今回のテーマ「高い付加価値をつける」という事例でいくと、1つありました。それが、日本製紙クレシアが発売したこちらの高級ティッシュ「羽衣」です。
ティッシュって言ったら、新宿とか渋谷とか、そこらへんを歩いていればタダでももらえますよね? 買うにしても、5箱とかで300円くらいの話です。でも、、このティッシュは3箱で3240円。つまり1箱1000円です…
初めて見た時、「そんなもん売れるかよ!」と思ったんですが、、なんと生産が間に合わず何度か販売休止をせざるを得なかったことがあるほど人気だそうです。。どうやら調べてみると、お中元やお歳暮などの「贈答品」として買われることが多いようです。あと、ネタ的に忘年会などの「景品」用にも人気があるとのこと。
もちろん品質がいいというのはありますが、、ぶっちゃけティッシュの品質なんてそんなに素人にはわからないので、ネーミング(あとパッケージも)の力は偉大です。決めるのは大変ですが、、適当に決めるのではなく、時間をかける価値はありますね。
そして、最後のポイントが、
です。
商品の売り手・開発者はその素晴らしさを十分に知っています。なので、当然それが見込み客にもわかるはずだ。と考えますが、、しっかりと伝えなければ見込み客にはわかりません。そして、多くの人は、本来その商品が持つ価値の1/10も伝えられていないのが現状です…
ただし、その価値を伝えるのに、ただくどくどと説明してもうんざりするだけですよね? そこで効果的なのが、その商品が持つ「ストーリー」を語ることです。
人は、生まれながらにして「ストーリー」を求める生き物です。小さい頃に絵本を読んだ経験から始まり、今では、小説やドラマ、映画など、様々なストーリーをお金を払ってでも見ようとします。そのため、ストーリーはマーケティングにおいても、あなたが見込み客に対して説明したり、説得するよりも常に効果を発揮します。
ダイレクトマーケティングの生みの親と言われるレスター・ワンダーマン。彼が昔手がけた案件に、コーヒーの通信販売の事例があります。このコーヒーはスウェーデン産なのですが、当時のアメリカでは、コーヒーといえば南米が主流。さらに、コーヒーを通信販売で売るという成功事例はまだ一度もないという、なかなか難しい案件でした。
そこで、彼がリサーチをした結果、コーヒーの愛好家たちは「おしゃれさ」とか、「健康的」といったメッセージにはあまり反応を示しませんでした。その一方で、「品質へのこだわり」にはかなり好意的な反応を示しました。そこを見抜いたワンダーマンは、コーヒーの品質への「こだわり」を全面に打ち出した広告を作ることに。
ヘッドラインは「国王に愛されるコーヒーを作り出した見事なこだわり」として、そこに創業者の古い肖像画を添えました。さらに、スウェーデンの国王が気に入り、王室御用達のコーヒーに指定したことも紹介しました。書き出しで「こだわり」が伝わるようなストーリーを語ったのです…
”「一世紀以上も昔、スウェーデンの小さな港町イェーブレで、ひとりの男がある執念に取り憑かれました。・・それは、完璧なコーヒーを作り出すこだわりです。彼の探求は1853年に開始されました。このとき彼が興した会社は、今でも創業者の名を冠しています。
彼は飽くことのない熱心さでコーヒーをブレンドし、ローストし、テストし、味わいました。町の人たちは彼のコーヒーの味をとても素晴らしいと思いましたが、彼はそれでも満足しませんでした。そして、この家業を息子たちに譲った時、彼はそのこだわりも伝えたのです….」”
「ワンダーマンの売る広告」より引用:
その結果、このコーヒーの通信販売は逆境を乗り越え、見事にヒットしました。
お待たせしました。ではここで、冒頭で紹介したリッチの実践事例を紹介します。リッチは当時、親族から売上1.5億、借金1.5億という大赤字の服屋を継いだばかり。数字を見るからにかなり苦しい状況に置かれていました…
もともとどこにでもありそうな独自性のない店を、ファッションの激戦区:マンハッタンで最も人気がある服屋の一員にまで押し上げることができた理由の1つは、、その店をクラブミュージック好きの人向けに徹底的に絞り込んだこと。そして、もう1つは、商品を大切にすること。具体的には、すべての服が持つストーリーを語り、その1つ1つを特別なものにしたからでした。
リッチが店を引き継いだ時点で、半分が古着、半分が新品という商品構成でした。その商品構成はそのままにしたのですが、古着の大半はごみ同然の代物だったといいます。そこで、リッチは世界中を飛び回り、店のコンセプトに合う本当にかっこいいもの。かつ、どこにも売っていないようなユニークな古着だけを買い集めました。
そして、そのユニークな洋服それぞれについての物語を語ったのです。たとえば、ヨーロッパで買い漁ったスラロームのスキーセーターを手に取ると、そこにはタグが付いていて、「このレース用のスキーセーターは1960年代に、主にドイツやオーストリアなど、ヨーロッパで着られていたものです。私たちはヨーロッパ中を回ってこのユニークなセーターを探し出したのです……」などと書かれているのです。
このように、種類ごとに1つ1つ別のことを書き、その服が持つストーリーを語るようにしました。すると、、店はたちまち人気を集め、仕入れ価格25ドルで買ったただの古着が、1着300~400ドルで飛ぶように売れていきました。ある時はディーゼルのデザイナーが店に来て何着も買って帰ったり、ドルチェ&ガッバーナ、カルバン・クラインなど、ほとんどの有名デザイナーがリッチの店に来るほどまでになったそうです…
以上、商品の付加価値を高める3つのポイントは、、
①パッケージ
②ネーミング
③ストーリー
の3つです。
「顧客だけでなく、商品も大切にしなさい」
こちらのアドバイスについては、おそらく日本人は商品へのこだわりが強いので、すでにやっているという方は多いかもしれません。ただし、これらのポイントを意識することで、もっとその価値を引き出し、高く売ることができるようになるでしょう。
萩原 敬大
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